建具・表具工の仕事内容
建具・表具工
建具とは戸、窓、障子、ふすまなど、建築物の開口部に設けた、開閉できる仕切りのことです。また、表具とは、布や紙などを張ることによって仕立てられた巻物、掛軸、屏風、ふすま、ついたて、額、画帖などのことです。建具を作るのが建具工で、表具を作るのが表具工です。
長い歴史を持つ技の仕事
もともと建具を作る職人を建具師、表具を作る職人を表具師と言います。
建具師は少なくとも江戸時代から活躍していたようですが、表具師は“巻物”の歴史から言ってもさらに古く、平安時代には今の表具師の原型となる職人がいました。鎌倉時代から室町時代には掛け軸文化が広まり、江戸時代には茶の湯の文化とともに表具も一般化されていきました。
この建具師、表具師を現代的に言うと建具工、表具工となります。
建具は、ふすまや障子などの木製建具と、アルミサッシなどの金属製建具(鋼製建具)に分けられます。さらに木製建具の製作は、ノミやカンナを使う手加工と機械加工にも分けられます。大まかな作業は機械で行い、細かい作業は手仕事で行うというように使い分けていて、どちらも木目の美しさを引き立てる技が重要です。用途に合った木材を選び、開口部に対して寸分の差もない建具を生みだすのが、建具工の技です。金属製建具製作の切断や曲げなどにもミリ単位の精度が求められます。
一方、表具は紙と木でできた調度品などのことです。この表具作りは繊細な素材を使った複雑な作業であり、高度な技術と経験が要求されます。一般家庭にもあるもの、芸術的価値のあるもの、それに美術品など、表具工が扱う対象は多岐に渡り、貴重な美術品を手がけることも多く、美術に関する幅広い知識も備えていなければいけません。
そもそも“紙”とは脆弱な素材であり、そこに描かれた絵画、書かれた経文を保護・保存する目的もあって、絵画技法が中国や朝鮮半島から導入されてくると同時に、表具の技術も紹介されました。保存も重要な目的なので、表具の修理・修復も表具工の大切な仕事の1つになっています。
伝統工芸的な技術
建具は建築物には欠かせない扉や窓のことであり、木製建具から金属製建具まで、主に身近な建具を扱う“町の建具屋”が多く活躍しています。しかし、建具の長い歴史の中で培われた、伝統工芸的な技術もあります。それが組子細工です。
組子とは、釘を使わずに木を組み付ける技術のことで、1本の材木を1.5mmの木片に切り分け、切り込みやほぞ(突起)を施して組み合わせ、意匠、すなわち模様を作り出します。窓、障子などの建具や欄間の格子などに用いられる日本の伝統技法です。
一方、表具での代表的な技法には裏打ちがあります。裏打ちとは、水墨画や書道のように和紙に書いてある作品本紙の裏に紙を貼り付け、補強することです。紙は水分が加わると収縮するので、墨を乗せた部分は収縮し、乗せない部分は収縮しません。これをそのままにしておくと作品本紙にシワやたるみが生じてしまいます。そうならないように裏打ちを行い、このシワやたるみを防ぎます。
技能を認定する国家資格も
建具工、表具工として仕事をするには専門の技能が必要なので、職業訓練学校や専門学校に通うか、工房や会社で働きながら技術を学んでいくことになります。
それぞれ技能を認定する国家資格として建具製作技能士、表装技能士があります。
建具製作技能士
建具製作の技能を認定する国家資格で、木製建具手加工作業、木製建具機械加工作業、アルミ製室内建具製作作業に区分され、それぞれ1級と2級があります。インテリアや室内建具に関する専門知識、構造力学、デザイン、材質に関する知識や工具を使いこなせる技術など、建具製作のプロフェッショナルとして必要な能力が問われます。
表装技能士
表具は表装ともいい、その技能を認定するのが表装技能士の国家資格です。表具作業と壁装作業に区分され、それぞれ1級と2級があります。額装とは、絵画や写真などを額に仕上げることを言います。